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モヒカンポシェット

MOHIKANPOCHETTE
 
世界でたったひとつをつくる
 
2025
SS Collection
 

森にある海


 
写真 岡松トモキ
 
 
 
 
 
ここはどこだろう。
 
とても温かい。
と、思っていたらすぐに。
上の方へ持ち上げられた。
 
よく考えたら、上とか下も分からなかったのだけれど。
重い方が下で、軽い方が上かな。
 
上へあがったら。
横から力が。
清々しい力。
それはもう、ただの力。
 
力に流される。
 
とても心地よい。
 
しばらくすると、私と同じような何かが、たくさん集まってきた。
集まって回る、周る、うずになる。
 
横からの力はやまず、そのうずは強大に膨れ上がる。
やがて見たこともない、強固なギザギザが見えてきた。
 
途轍もない壁。
 
あれに当たっては、どうにもならない。
ぐんぐん迫ってきた刻刻にぶち当たった。
わたし達は粉みじんになった気がしたが。
 
気がつけば、やわらかい何かにくっついていた。
知らない匂いに包まれる。
 
香ばしくて甘い。
 
しがみついていたものは、もやもやとしていて、わたし達はぽたぽたとしていた。
今度は下に、下に向かって進み始める。
 
突然始まる旅はいつも、予想外だ。
 
この旅の途中には、ガイドもいた。
 
海、風、山、森、木、苔、土、水。
 
わたし達が過ごした時間の名前らしいが、わたし達が過ごした旅を表してはいない。
長くもない時を過ごし、わたし達はまた、あの温かい場所へ帰ってきた。
 
風が吹いている。
 
再び旅が始まる。
 
海が森に会いに来て、森は海を生む。
 
その繰り返しのなかに、わたし達はいる。
 
 
 
 
 

森にある海